前立腺肥大症
前立腺肥大症とは、前立腺が肥大することによりその真ん中を通る尿道を圧迫し、排尿障害や頻尿などが生じる病態です。初期ではおしっこが近くなり、その後進行すると長く立って、下腹部に力を入れないとおしっこが出ない、またおしっこの流れが弱くて細くなり、おしっこが途中で切れたり、残尿感、夜間頻尿がみられてきます。前立腺肥大症の合併症としておしっこが全く出なく(尿閉)なり、ひどい時には膀胱が拡大し、おしっこが腎臓に逆流し、圧力が加わって腎臓の損傷を起こすこともある恐い病気です。
前立腺肥大症の検査
直腸診、尿検査、血液検査や尿の出方を調べる尿流量測定や前立腺の観察を行い、前立腺の内部の様子を見る経直腸的超音波検査などを行います。前立腺のすぐ後ろには直腸があり、直腸のすぐ下には肛門があります。ですから、肛門から指を入れてしらべる直腸診(ちょくちょうしん)が、前立腺肥大症の状態を調べる検査として一番安全な検査法として行われています。また苦痛のないエコーでの検査もあります。簡単に前立腺の大きさや残尿の量なども判定できるので、広く普及しています。尿流測定検査なども簡単にできるので、排尿の勢いを数値で表すこともできます。
前立腺肥大症の治療法
◆薬物治療 症状がひどくない場合、前立腺癌の可能性がない場合には薬物療法を行ないます。尿道を広げて(機能的に)おしっこを出やすくする薬や、ホルモン剤で前立腺自体を小さくする薬や、炎症を抑える薬や漢方薬などを使用します。
◆外科的(手術)療法 経尿道的前立腺除去手術 尿道からカメラを入れ電気メスを使って肥大した前立腺を切り取る内視鏡手術です。普及している一般的な手術ですが、完全除去まではいたらず、再発することもあります。 最近ではレーザーを使用した内視鏡手術など多種多様な手術療法があります。
前立腺炎
前立腺に炎症を起こす病気です。これには急性と慢性とがあります。
◆急性前立腺炎
38度以上の発熱、股間から腰部にかけての重痛い感じ、排尿時痛、排尿困難、頻尿などの症状が出ます。時に尿閉(おしっこがまったく出なくなる)になることもあります。
◆慢性前立腺炎
発熱はないが、●残尿感、●頻尿、●痛みや不快感(陰嚢と肛門の間の会陰部、下腹部、足の付け根、陰茎の先、睾丸など)、●排尿時痛、●精液に血が混じる、などの症状が見られます。「我慢できないことはないが、何とも言えない不快感がある、昼間は感じないが夜にベッドに入るとなんか気になる」と訴えることがよくあります。
前立腺炎の検査
慢性前立腺炎の場合は、肛門に指を挿入して、肛門の直上で腹側に位置する前立腺を触診します。前立腺に圧痛や疼痛がないか、また硬結がないか調べます。また腫れや浮球感がないかも診察します。前立腺のまわりにある外括約筋の緊張の度合いも調べます。
前立腺炎の治療法
急性の場合は、抗生物質の点滴や内服治療を行います。 慢性の場合は、抗菌剤の内服や生薬、消炎剤などを投与しますが、改善するには1~3ヶ月ほどかかります。
前立腺がん
PSAは前立腺がんの腫瘍マーカーで、これが高値を示すと前立腺癌の可能性があります。前立腺癌は日本でも最近増加傾向にあり、男性の癌罹患者数の第3位になっています。高齢化社会や、食事の欧米化が進んでいるのも原因と思われます。初期にはほとんど自覚症状はなく、進行すると前立腺肥大症のように、頻尿や排尿困難がおこり、さらに進行するとしばしば骨に転移をして腰痛などが出現します。PSAは前立腺から出されるタンパク質で癌になるとたくさん血中に放出されます。一般的には、0~4ng/mlが正常、4~10ng/mlが注意領域(グレーゾーン)、10ng/ml以上で危険領域(がんが疑われる)と言われています。PSAが高ければ精密検査が必要になります。
前立腺がんの検査
- 直聴診(肛門から指を入れて前立腺の性状を調べる)
- 経直腸エコー(肛門から探触子を挿入しての超音波検査)
- MRI検査
- 前立腺生検 前立腺癌の確定診断をする重要な検査で、経直腸エコーをしながら、会陰部や直腸から針を刺して前立腺の組織を何か所も採って顕微鏡で癌の有無を調べる。
前立腺がんの治療法
- 手術療法(前立腺摘出術)
- 放射線療法
- ホルモン療法(注射や内服薬)、などがあります。